離婚してからの10年間、私は実家の両親とともに暮らしていた。
そこには、もうじき2歳になるオスのミニチュアダックス「ろびん」がいる。
ろびんと出会ったのは、2年前のクリスマス。
当時、こんな生活になろうとは思いもしなかった私と彼で下の娘のために買った。
風の強い寒い日に、産まれて2ヶ月の小さな「ろびん」は、私の腕の中でタオルにくるまれて
震えていた。
あれから、2年・・
「ろびん」はどう見ても「バカ犬」である。
お散歩で出会う小さな子供に吠えまくり、
家の中ではおもらしなど当たり前。
獣医さんに噛み付き去勢手術を勧められた・・
唯一できることは、
何か欲しいときにだけやる「おすわり・お手・おかわり・待て」の
一連のお決まりの動作のみ。
それも、エサもおやつも何もないのにやらせようとしてもきっちり無視する。
だけど・・
長男が野球で悔し泣きしているとき、長女がお兄ちゃんに泣かされたとき、
私が心の中で大泣きしているとき・・
「ろびん」は絶対にそばを離れない。
涙を流せば、その涙を全部なめてくれる。
たまにふざけて泣きまねをするのだが、そんなときも、きっちり無視される。
「ろびん」はすべてわかっているのではないかと思う。
わかったうえで、彼はすべてのことをありのまま受け入れている。
ペットが飼えないこのマンションで、彼と4人の生活を始めるために、
私たちは「ろびん」と離れなくてはならなくなった。
実家はここから歩いて10分とかからないのだが、私の心にはずっと「ろびん」に対する
罪悪感があった。
人間なら、私を恨むはずだ。
「ろびん」は何も言わない。(当然だけど・・)
どんなときでも私たちとの再会を全身で喜び、常に同じ気持ちで愛してくれている。
やってしまったことをいつまでも引きずって後悔することもないし、
明日のことを心配してクヨクヨ悩むこともしない。
生きるために大切なことを私たちに教えるために「ろびん」がここにやってきた気がする。